ウィーン在住のまけないぞうサポーター 楢崎誠広さんからのレポートです

2012年1月23日 月曜日

ウイーンに在住の楢崎誠広さん。2012年1月に一時帰国した機会に、老人ホーム訪問コンサート、気仙沼市内の中学校訪問、歌を通じて子ども達と先生方と交流会、そして最後に岩手県の遠野市へ行って、「まけないぞう」の活動に同行しました。

3.11震災の直後から、ウイーンに在住の音楽家が力を合わせてチャリテイーコンサートなど さまざまな催しが行われ、楢崎さんはそのときからずっと積極的に動いていましたが、「現地でできることはないか」と考え続けてきたということです。

ご本人の承諾を得て、「まけないぞう」についてのレポートを転載させていただきます。
楢崎さん、ありがとうございます。

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被災地NGO協働「まけないぞう」の活動に同行

【日時】1月13日(金)午前9時から14時くらいまで

【場所】拠点のある遠野市から 釜石市、大槌町にアクセス
【参加者】NGOの担当者、私、仮設住宅に住んでいる方々、他団体のスタッフ。

【内容:所見】

被災地NGO協働センター「まけないぞう」は、阪神大震災の後、タオルを使ってゾウの形に縫い合わせた壁掛けタオルを作ってそれを売ることによって被災者の生きがい、仕事づくりに取り組んできた団体で、その後様々な災害の度に被災者に寄り添った活動を続けてきている。まずそのことに敬意を持たなければいけない。
「まけないぞう」人形作りの他に、仮設住宅に住んでいる方々に「足湯」のサービスなども行なっているようだ。

今回は拠点のある岩手県遠野市から、沿岸部の釜石市、大槌町へ車で移動して仮設住宅を訪ね、作り手さんと一緒に時間を過ごす、というこの団体にとって最も基本的な活動に同行させていただいた。
まず、とても寒く、雪で路面が凍る危険もある遠野市内を抜けて釜石市へ。トンネルを抜けると雪はなかった。内陸部と沿岸部でこうも気候が違うものか、とびっくりした。
今回の東北滞在で遠野市が一番寒かった。

釜石市では仮設住宅に入っている方と、ゾウさん人形作りを体験。実際波縫い、玉止めなど裁縫を何年かぶりにこなし、人形を作った。難しい部分は経験者にやってもらい、簡単な部分だけ体験。助けを借りて何とかできたが、初心者の作った未熟な作品は販売用には使えないので記念にもらっておくことに。
このゾウさん人形を販売できるくらいに綺麗に作れるようになったら、一体につき100円を制作費として手に入れることが出来る。人形自体は400円で売って、残りの300円から材料費、送料の実費を除いた額をプールし、次の被災地支援に使う仕組みになっている。
頑張って相当数の人形を作った方は、その制作費を生活費の足しにすることもでき、被災者への経済的な援助にも少しつながっていく。
釜石で出会ったSさんは、震災前、釜石市でベートーベンの第九の合唱団に所属し、何回も歌われたそうだ。今回新しく出会った方とクラシック音楽の話が出来るなんて思いもしなかった。昔N響で指揮したこともある先生が釜石出身で、地元に音楽文化を根付かせるために、忍耐強く素晴らしい指導方針で第九を庶民に広めたそうだ。良い話を聴いた。

次の訪問地、大槌町では「まけないぞう」がNGO団体として助成金を受けるため、その助成金を出してくれる団体、「シビック・フォース」のスタッフの方3人と合流。事前に了解を取った仮設住宅の入居者を取材。「まけないぞう」人形づくりにまつわる話などをいろいろ聞いた。その作り手さんは約3週間の間に90体以上の人形を頑張って制作され、約9000円の制作費を受け取っていた。9000円あればかなり買い物ができる。ただ、仮設住宅暮らしのストレスが原因か、気管支炎を患い、咳がつらそうで気の毒だった。また、もう一人の作り手さんは津波で足を持って行かれそうになり、何とか生き残ったが、それがトラウマになって今ではよく足をつってしまうそうだ。心からお見舞いを申し上げ、回復をお祈りしたい。

今回はこの2つの住宅を訪問、担当の方にはその後遠野駅まで送っていただき、電車の発車時刻の関係で時間設定の面で大変なプレッシャーをかけてしまった。実は今回の活動は遠野市内で行われるものと思い込んでいた私は、沿岸部の都市まで出かける、と聞いてびっくりした。ただ、沿岸部の被害の様子も車の中から視察し、貴重な体験をさせていただいた。

今回は被害が広範囲に及び、津波で破壊された各都市の沿岸部はそう簡単に元通りにはできない状況にある。後2ヶ月弱で一年になる今も、土地をどう利用していくかはほとんど決まっていない地区がほとんど。甚大な被害を被った地域は完全に元通りにするのは10年くらいかかる、という話もある。これから長くなる可能性が高い被災者の仮設住宅暮らしに寄り添い、生活支援を行なっていく「まけないぞう」の活動は非常に意味のあるものだと思う。「まけないぞう」のスタッフの方は、過去の災害支援の経験から、長期戦を戦い抜くために何が必要かを良く知っている。

ウィーンに戻って直接は何も出来ないけれど、ゾウさん人形を広めていくことはできるので、少しずつでも友人、知人に紹介していこうと思う。また、現地で活動している人間をボランティアで支援する、という視点もとても重要だと思った。

担当の方、釜石、大槌の皆さん、大変お世話になりました。

以上で今回のレポート終了。
また、自分で支援の形を考え、こつこつと実行していきます。


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