嵐の夜に

2011年9月22日 木曜日

台風12号の復旧も侭ならないうちに、台風15号がまたも多くの爪痕を残して日本列島を縦断してゆきました。東北の被災地を駆け抜けて行ったのです。

東京の中央区にあるわたしのクリニックには、午前中に患者さんが集中しました。午後からは、時おり激しく風雨が荒れ狂うかと思えば、また少し静かになるを、繰り返していました。

いよいよ16時を回る頃には、空が真っ暗になって夜のようでしたので、スタッフをかえしました。
しかし、急に『閉診』する分けにもいかないので、わたしは定刻まで残ろうと決めていました。

16時半を回っても、まだ患者さんはいらっしゃいました。横浜からわざわざクルマで来られた患者さんの治療が終わってお帰りになる時には、もう外は大嵐になっていました。
「外はすごい嵐です。僕のために残ってくださったのですから、僕がクルマでお家まで送ります。どうぞ乗っていってください」

普段なら、患者さんにそんなご負担をおかけするのは本望ではないので、お心だけ頂いてお帰り頂くところなのですが……。
この時、東京の街ではどこも電車が全て止まり、従ってタクシーもなく、全く動きがとれない状況下にありました。
それで、一生懸命に誘ってくださる優しいお言葉に甘えて、家まで送って頂くことに致しました。

渡辺大さんは、5年程前からかかられている患者さんですが、とても奥ゆかしくて優しいお人柄で、クルマを降りる時に思わず白いまけないぞう@岩手を一つ差し上げたところ
「これ待合室で見かけてすごく気になっていたのです。とてもうれしいです」とおっしゃって受け取ってくださいました。
こういう時胸の奥から湧き上ってくる感謝の気持ちを、まけないぞうは何倍にもして相手の心に届けてくれるような気がしました。

釜石の避難所でお話をお聞きした、まけないぞうの作り手さんである柏木ざんが、「何もかも流されちゃってお返しができないから、お礼の気持ちを伝えたくて、みなさんに自分で作ったまけないぞうをあげるんですよ。すごく喜んでくれるからね」と、そう言ってらっしゃったのを思い出しました。

遠ざかる大さんのテールランプを見ながら、「GIFT」のほんとうの意味を、釜石の柏木さんの言葉を、ふと実感した嵐の夜です。


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