ドクター青木のぞうさん日記

makenaizone主宰の青木正美が、自分の生活の中でできるボランティアとは何かを考え、実行してみよう、そんな四方山話を綴ります。
Dr Aoki's Prescription...

2013.6.10

2013年6月10日 月曜日

ここのところ、声の消耗が激しい。町医者というのは、一日中しゃべっているのが仕事といっても過言ではないのだけれども、それにしても声が潰れて喉が痛い痛い。声を出すのにいつもより余計に力を入れなければならない。

一つ心当たりがあるのは、ウクライナから帰ってきて、患者さん方とお話をする機会が圧倒的に増えているということだ。
福島のこと、この国の未来のこと、関心が高い方々がうちの患者さんにはとても多い。で、ついつい大きな声で話してしまう。

月曜日は教育関係者の患者さんが多くて、学校教育の中でどのように放射線防御の教育を継続していったら良いかという話になった。この問題は、実は次世代のために一番大事な問題だと思うからだ。

「風評被害とか差別とかが怖いのです」と先生。
確かに、それは怖いだろう。しかし、差別や風評被害を生む、あるいは見事にそれらを孕ませる社会(政治家の発言や報道や教育も含めて)へと巧妙に持ってゆく手口そのものが、わたしに怖くて怖くて仕方がない。

そうしてそんな社会に抗うことを余儀なくされている若いママたちの存在を、孤立させてしまう社会がわたしにはやるせなくて仕方がない。

7日には「子ども・被災者支援法」を適応して、こどもの健康調査を要請する67000筆の署名が国会議員に手渡された。
この運動を始めたのも、東葛(千葉県茨城県などの柏や松戸など)地域のママたちだ。
「放射能から子どもを守ろう関東ネット」代表の増田さんも骨身を削ってほんとうによく倒れないでやっている。
全国には、こうしたママたちが立ち上げたネットワークが沢山あって、そのいくつかとわたしも繋がっているのだけれども、東葛のママたちがいつも先頭を切って走っているのは確かなことだ。

放射線障害との闘いはこれからも長く続く。だから、まずはあまり疲れ過ぎないように行こうよね、と、我が潰れた喉で実感する夜だ。
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2013.6.9

2013年6月9日 日曜日

ウクライナから帰ってきて、虫刺されが治らなかったり肋骨を折ったりしていたのだが、ここのところ風邪っぽくて、日曜日は家でウダウダしてしまった。
来週からテンコ盛りで原稿の〆切がつづく。ちょっと体調を戻さないといけない。

ところで昨日だったか、江戸川のウナギから140Bq/kg検出されたとかで、ウナギが出荷停止になったというニュースがあった。
NHKのかぶんブログには「再来年3月に東京湾での放射性セシウムの濃度は最高に達して、4000Bq/kgになるところも出る」という京都大学防災研究所の発表を載せていた。

この泥の中で育まれた命の食物連鎖は、いったい何時になったらクリーンな状態になるのだろうか。本来ならストロンチウムだってプルトニウムだって調べなぁ、アカンでしょうに。

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この国のエライさんたちは、もっとしっかりと命に向き合って欲しいものだ。


2013.6.8

2013年6月8日 土曜日

東日本大震災つづく福島第一原発の事故は、返す返すも残念であり、この事故に因って多くの人々が分断され傷つき、今もまだまだ進行中でありこれから先恐らく何世紀も語り継がれる事故になってしまった。
その中で、たった一つだけ救いがあったというか、劇的に変化があったことといえば、一般の人々の中に大きく目覚めた人々が出てきたことだ。本来的には無かった方が良かった事故であるのだが、こんな人々に出会えたことは、何というかものすごく感謝をしている。

8日は「原発民主法廷」第九回 福島法廷 を聞きに福島コラッセに行ってきた。

会場には至る所に、知った顔があった。この法廷の主催者の一人、田部知江子弁護士は一緒にウクライナに行ったメンバーだったり、今日の証人の松井英介医師を始め、聴衆にも何人も友人が居る。

その中で特筆すべきなのは、福島のママたちだ。これは、福島県下に限らないのだが、今回、高濃度汚染地域になってしまった地域の人々の中に、この異常事態にいち早く敢然と立ち向かったのがママ達だった。
今日も沢山のママ達と繋がった。FacebookやTwitterでその存在は知ってはいたのだが、リアルで会うのは初めてのママや、いまや親戚同様につき合っている友人もいる。まるで古里に帰ってきたような感じすらする。

法廷が終わって、おしどりのマコさんとケンパルさんと福島の仲間たち10人ほどで夕食を囲んだ。

おしどりマコさんのジャーナリストとしての鋭さは、この時代に奇跡的に巡り合わされた逸材であるといつも感銘を受けているのだが、ケンパルさんがまたものすごく頭の切れる人で、二人とも同じ方向を向きしっかりと相手の話に耳を傾け、深く共感をする。
まさにツインターボの頭脳、4つの目、4つの耳、2つの優しくて熱い心……色々と感銘を受けることしきりだった。

という訳で、遅い新幹線で東京に戻る。夕方、南海トラフ域で地震が多発した。大きな変化にならないことを心から祈っている。

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2013.6.7

2013年6月7日 金曜日

自分のHP  で日記を書いているのだが、ここの所、どこからかアタックされて編集ができない状態になっている。

今テクニカルスタッフに修繕をしてもらっている。

HPのログインができなくなってしまったとたんに、凄いストレスが襲ってきた。
おっかしいなぁ、いつもは晩に、何を書こうかなぁ、弱ったなぁ、という日々の方が圧倒的に多いのに。
ところが、「書けない」といこと、こんなにもストレスになるなんて……。
人間というのは、何と言う贅沢なものなのだろうか。

さて、明日は福島市。
「原発民衆法廷 第9回 福島法廷」へ。

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2013.6.6  その2

2013年6月6日 木曜日

じぇじぇじぇ、ログインできる! ログインできている間に、福島の事故当時18歳以下の36万人の健診を受けた子ども達12人に甲状腺癌が、疑いが15人になったというニュースについて。
5日の共同通信の発表がほとんど大きなニュースにならないで、6日になった。
地元福島県の2大紙は5日に発表したものの、一面トップじゃないし、福島県立医大での記者会見だろうに、共同通信の記事を掲載していたという「鈍感」ぶり。

しかも、この現象を「県民健康管理調査」の検討委員会では、「現時点では放射線の影響を明らかに示すものではないと理解している」といっている。

わたしは甲状腺専門医でもなんでもない。呑気な中年の町医者だ。
「県民健康管理調査」の検討委員会のエライさんとは、医者としても科学者としても雲と泥ぐらい違う。

しかし、いくら呑気な泥の町医者でも、こんな具体的に癌が多発しているのに「放射線の影響を明らかに示すものではない」とは到底思えない。
検討委員会のエライさん方が、「予防原則」というものをご存じないはずがない。どうして、予防原則の立場に立って子ども達を守ろうとしないのだろうか。

私たち人間の作り出してきてしまった「科学」には、必ずしも光だけがあった訳ではなかった。時には光を帳消しにするぐらいの暗黒があったのではなかったか。
だからこそ、科学の進歩に伴って人の健康や環境に重大かつ不可逆的影響を及ぼす恐れがある場合、科学的に因果関係が十分に証明できなくても被害を防ぐように措置をしようと、1992年のリオで宣言されたのではなかったか。

医学論文や科学論文は、一言でいえば統計の世界だ。それを国際的に評価する幾重の決まり事がある。
わたしは今、そんな事を変えろなどと言うつもりはない。統計の精度が悪いものなど、真っ当な評価に値しないことは重々承知している。
しかしたった今の日本では「予防原則」に則って、現状を評価して素早く動くことこそ、真の科学者・真の医学者のすべきことではないのだろうか。

誰がどんな理由でためらっているのか、わたしごときが知るよしもない。
けれども、「予防原則」において、科学的裏付けの不足を理由に対策を遅らせてならないことを、もう一度日本の科学者・医学者は肝に銘じなければならない。そうして、その国の経済の許す限り真摯に向き合わなくてはならないということを、あらゆる人々の命と尊厳を守る人権を守るという見地に立って、作られたということをもう一度思い出す必要があるだろう。

それから、マスコミよ。アベノミクスで株価がどうなろうとも、そんなことより万倍も重要な提言を、無知で臆病な科学者や医学者に、たった今発信することこそが、あなたたちの急務であろうや。
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