2014.7.12

2014年7月12日 土曜日

一昨日辺りから、NHKの「クローズアップ現代」に出演した菅官房長官を、司会の国谷裕子氏が激怒させて関係者に土下座させたというのがSNSで話題になっていた。
それで、NHKオンデマンドで番組を見てみた。
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なるほど。これは、NHKを掌握していると自負している安倍政権にとっては、トンでもない大事故だったに違いない。
「クローズアップ現代」7月3日放送の本編28分のうち、冒頭の5分間は北朝鮮問題で、集団的自衛権の行使容認に関する部分は約23分間だ。
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のっけから、憲法の解釈の大転換であるが、世界の戦争の多くが自衛の名の下に行われてきた。ほんとうに歯止めは効くのだろうか、という否定的なナレーションで菅氏、国谷氏、政治部の原記者も入ってはいるが、ほぼ2人での大討論が始まる。
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国谷氏は本当に自衛戦争だけなのか、解釈で憲法を変えるのは国のあり方が変わるわけで、政府の言うような外的要因だけ解釈改憲をしていいのか、本当に歯止めはかかるのか、アメリカの戦争への要請を断れるのか、日米同盟強化で日本の独立性が失われる結果、世界に於ける日本のプレゼンスが失われるのではないか。そもそも憲法解釈を変更したという、原則の部分での違和感や不安をどうやって払拭してゆけるのか、と、畳みかけて菅氏を追い込んでゆく。
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菅氏は、元々、自分たちの見解だけで変えた解釈なので、論理立てて説明ができないし、
そもそもの解釈改憲へのアプローチが、42年間で世界情勢が変わっり、隣国の脅威が増しているからなどという説明に説得力が殆どなく、防戦一方の説明に終始した。
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憲法学者などの識者や記者など、この解釈改憲に対して立憲主義の否定ではないか等々、論理的に追求したすばらしい文章は多々あった。
しかし、内閣の要人に対して、対面でここまで直球で解釈改憲の可否を追いつめたインタビュアーは、国谷氏を置いては他にいまい。
何度も何度も畳み掛け、政権No.2を相手に23分間に渡り、決して後にはひかず突っ込んでゆくインタビュー。最盛期の田原総一朗氏などでも、決してああはならなかっただろう。
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私たちの社会では、名前を残すジャーナリストや司会者は、為政者が間違っていても決して最後まで追いつめない。一気に追いつめて答えを失った為政者の狼狽を視聴者に見せて、すぐにそれと分かるように逃げ道を作ってやる。だからこそ、為政者は番組に出てくるのだし、そこでどんなにリスキーでも両者が何らかのプラスになるようになっているのだ。
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それを考えると、週刊誌の「フライデー」の報道のように、この政権はきっと国谷氏を許しはしまい。
権力の中枢に向かって、真っ当にその解釈改憲の矛盾を問うただけであったのだが、テレビであんなに詰め寄られたのは、菅は初めてではなかったか。菅だから持ったものの、他の閣僚では23分も持たなかったのではないだろうか。
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3日放送の「クローズアップ現代」は、残り時間が殆ど無いにもかかわらず、国谷氏は「そもそも憲法解釈を変更したという原則の部分で、違和感や不安がある。どう払拭していけるのか?」と畳み掛け、菅の憤慨しているような説明の途中で音声と画像は切れた。
20年以上、レギュラー番組で生放送をしている国谷氏が、こんな単純な時間配分を間違えるとは思えない。
だからこそ、この終わり方が決定的に菅氏を追いつめたという証拠でもある。

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解釈改憲がどれほど正当性が無いか、どれほど矛盾に満ちているか、どれほど唯我独尊でつくられてきたか、どれだけ立憲主義を踏みにじり、どれだけ主権者である国民を無視しているのか、菅が一から十まで知らしめてくれていた。

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このまま国谷氏は「クローズアップ現代」を降ろされてしまうのだろうか。
そしたら「九条の会」や「戦争させない1000人の会」に呼んだらどうだろうか。
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何はともあれ、国谷氏の身辺が心配だ。
この人がNHKのプライムタイムから居なくなるのは、重ね重ね惜しい。

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番組はNHKオンデマンドで18日まで視聴可。

http://www.nhk-ondemand.jp
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7月3日放送
「クローズアップ現代」 集団的自衛権 菅官房長官に問う
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追伸 7月7日放送「クローズアップ現代」 原発新基準 安全は守られているのか
これが国谷氏の最後の出番なのだが、この番組も堅実でディープな取材に裏打ちされた素晴らしい内容だった。

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スーパームーン短夜になゐ連れて来し


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