日本が存亡の危機に立っていることは、専門家はみな知っている

2012年4月10日 火曜日

2012年4月5日 20:11

先日のNHKの『MEGAQUAKE2』を観ていて、震災直後の日本地震学会において、地震学者たちが大きな戸惑いと無力感を曝け出した場面を見て、私は急に、昨年4月初旬の災害復興学会の研究会での出来事が鮮やかに思い出されたのだった。

関 西の災害復興学の名だたる研究者たちが、東日本大震災の報告をしながら皆、男泣きに泣いていたのだ。私も含めてだが、ずっと積み上げてきた学術的な知見も 経験も、この巨大な震災に対しては何もかも役に立たなかったという、どうしようもない無力感に押しつぶされそうになっていた研究者たち。それをひたすら実 感した昨春の研究会だった。

あれから一年。研究者はみな少しづつ立ち直って、巨大なる課題を残した震災に対し、また歩き始 めたところだ。東日本大震災というのは、あらゆる専門家から大きく学術的な自信を奪い取り、ひたすら無力感と向き合うことになってしまった震災だった。そ の大きくて重い事実を、番組は思い出させてくれたのだった。

今週中に大飯原発を再稼働する決定をしようとしている政治家は、日本の名だたる災害の研究者たちのこの大きな無力感を知っているのだろうか。

同じように地震学や原子力の研究者たちの、どうしようもない無力感を知っているのだろうか。

 

はっきり言おう。私たちの国は、大きな地震活動期の只中にあり、あらゆる専門家の専門知識を持ってさえ予見が不可能な状況になっている。

この時点ではもはや、次の大災害に対してどうリスクを減らして行くべきなのかを、日本中の頭脳を集めて考える段階にあるだろう。少なくとも、原発のリスクだけでも減らしておかなくては、この国には実質的に未来はない。

恐らく、災害にかかわっている全ての専門家はそう思っているはずである。専門家ならずとも、そう考えている人は多いことだろう。

 

もう一度言おう。一年前の桜が咲いていた関西学院大学での研究会では、どうしようもない無力感を抱きしめながら途方に暮れた研究者たちは、一日中、泣きながら研究会を過ごしたのだった。それが、本当の日本の姿なのだ。

 

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昨日の未明にfacebookで下記のような文を書きました。
すると色々な方々がシェアといって、どんどん伝播してくださって、ここまでで260件のシェア、実に500人以上の方々がいいね!を押してくださいました(4月7日午後現在)。
4月10日現在 411件のシェア 905人が「いいね」      4月12日現在  430件のシェア 930人が「いいね」

—– Facebookでのコメントの一部を以下に紹介いたします。

(Y)  シェアさせていただきます。青木先生!お友達からお友達へとシェアが広がってます♪
皆さん共感しているのも当然かと思いますが、青木先生の素晴らし文章に感動しているのだと思います!!
私はそんな素晴らし文書をお書きになる先生を皆さんに知って頂いてとっても嬉しいデス(*^^*)
青木 正美 Yさん、ありがとうございます。昨晩寝る前に書き始めてしまって、取り留めもなく稚拙な文章で、お恥ずかしいです。でも、昨年の専門家の無力感を書き留めておきたかったのです。あれから何も変わっていないのですから。
(Y) 医療の専門家である先生だから尚その無力感を痛いほど理解できるのでしょうね。本当に何も変わっていない…あのドジョウ(怒)
(C) 私もシェアさせてくださいね。今日見上げた桜と青木さんの文章が重なり、想いがめぐります。

(YS) 初めまして。仰るとおりだと感じています。その無力感を、これからの日本を守るための力に、どうにか転じてください。政府は原子力村の言うがままです。野田首相をはじめとした閣僚の目のうつろさ、尋常ではありません。専門家のすべてが、辞表をたたきつけ、原子力村へ抗議してください。彼らは、日本の将来などどうなってもいい。目先のお金と社会的地位といった下らないものに、大きな価値観を持っているのです。それは、野田総理のうつろな目を見れば歴然です。総理は、原子力村の意に反すれば、殺されると思っているのでしょう。でも政治家は、それが仕事のはず。専門家もその地位を考えれば、Noblesse Obligeに基づく行動を起こさねば、日本を本当に滅ぼすことになります。
バンダジェフスキー博士は、放射能の本当の怖さを知らないことが、どれだけ人類は、高いコストを払っているか、そしてその無知が悲劇を招いていると、3/18の医師向けセミナーで配られた冊子の「あとがき」に書かれていました・・・・。

(S) はじめまして。青木さんの文章、出来るだけ多くの方に読んでいただきたいなと思います。
(M)シェアさせていただきます。1年前のこと 喉元過ぎれば熱さ忘れる。ということなのか?少なくとも原発のリスクは避けたいです。
(N) 「災害にかかわっている全ての専門家はそう思っているはずである。専門家ならずとも、そう考えている人は多いことだろう。」  ・・・・  なぜ、そうした専門家の声がうねりとなって聞こえて来ないのだろう。泣いているだけじゃダメではないのか。専門家をフォローするアクションはどうとればいいのか。
(O)  私も学会員ですが、最近は活動を放射能関係に専念です、落着いたら地震と地質学に戻ります。
(I) 大きな地震や自然破壊の前に、ナマズや小さな動物がそれを知らせてくれます。私たちはもっと動物になって、大切な感覚を取り戻さなくては…。科学的な裏付けを伴う予知力、シェアさせていただきます。
(E) はじめまして。学者の方々のご心情の吐露、ありがとうございます。初めて知りました。とても共感しましたのでシェアさせていただきますね。
(Y) ・・・すご\(◎o◎)/!やっぱりみなさん共感されてます!少しでも多くの人にシェアされ、政治の混迷、国民の無関心を何とかしないと本当に日本は滅びてしまう。。。どじょうまで届けばいいのに!

青木 正美 Yさん、いやはやびっくりしています。何でこんな駄文が……。ただ、みんなみんな無力感の中で、一年生きてきたのだということなのでしょうね。ほんとうによく頑張ったんですよね、福島の方々・東北の方々。そうして心ある全ての方々も。何か涙が出てきちゃった。
(S) シェアさせていただきます。でも、研究者の方々が今回の大震災で無力感を感じるのはおかしいと僕は思うのです。この貴重なデータを無駄にせずより正確な予測に活かすことが学問本来の目的なのですから。生意気なことを言って申し訳ありません。
青木 正美  Sさん、今はもう皆立ち上がっています。でも直後はそうでした。今でも引きずっていると思いますが。私たちはこれほどまでの自然の猛威と原発の事故のショックを、やはり想像しきれなかったのですよ。データーを解析したり云々というのはこれからの「仕事」です。そうでなくて、生きている人間の感情としての無力感は、逆にとても重要なことなのだと思います。そこらあたり、またちょっと整理してみますね。
(M)  近代日本は付け焼刃できたから仕方ないな。後世に渡って同じ民族で受け止めていくしかない。
(T)  共感しました!政府の思惑しか報じないマスコミに、それを真に受ける国民に・・・無力感がつのる一方です。
(K)  まさしく血の涙でつづった言葉。シェアさせていただきます。文章がどうのというより行間を読ませていただきました。
(K)  僕も、裁判で無力感を抱いたことがあります。それは何かというと、自分の研究内容や成果についての無力感ではなく、これだけのデータをそろえて報告して社会的にも警告を出しているのに、政治の都合であったり、予算であったりして、それがゆがめられてしまうこと。さらに裁判においても適用すべき法律がないために正しい判断ができないこと。そして、そのことによって大切な人たちが危険にさらされるのをどうすることもなく見ているしかない自分に、です。政治行政及び土木業界にこそ、人命を守るためにいいかげんな仕事をしたことを謝罪して欲しいと思います。
(T) はじめまして。反原発の活動をしていた友人たちも同様の無力感を味わっていました。無力感と、力が及ばなかったことへの罪悪感と…。これを上塗りするような事態だけはなんとしても避けねばなりませんね。
(F) さまざまな分野の心ある研究者、専門家が居てくれること、動いてくださっていることに日本人として、人間として嬉しく思っております。シェアさせていただきます。
(TM) 涙がでそうです。 シェアさせていただきます。 己の富と名誉のためだけしか考えられない人,子供の未来をいい加減にしか考えられな人間が多くなった悲しい国です。
(ND) 御用学者ばかりではない、そして沢山の研究者が実は懸命に声をあげていたこと知りました。表にでないだけで、沢山いるということがわかっただけでもありがたいです。ありがとう、シェアさせて頂きます。
(NH ) シェアさせていただきました。それでも進むしかない!
(UF) はじめまして。シェアさせてください。 あきらめるわけにはいかないですね。
(YY) 初めまして。いつまでも過去にこだわっているのは私だけ?のような風潮で 戸惑っていました。やはり忘れてはいけないのですねと心を強く思いました。シェアさせてください。
(S) 初めまして・・・昨日、那覇において「震災ガレキ広域処理にまつわる問題」の緊急学習会があったのですが、そこで在京の研究者からの報告があり・・・今の首都圏および「日本」は「問題の宝庫」である沖縄以上にとんでもない社会になりつつあることを実感しました。それは青木さんのような「マトモ」な研究者やご所属する学会はまったく少数なのではないかと・・・推察されるのです。「科学研究費」という命綱を握られた研究者たちと、スポンサーという命綱を握られたマスメディアの共犯関係はすでにこの国の根底から揺るがせていて、それは自然災害以上に危険な水域に達しつつあるのではないか?と。環境省およびそれにつながる学会の世にも怖ろしいゾンビ的世界に今夜は鳥肌立って・・・眠れません。

青木 正美  Sさんのおっしゃる事を全部否定はいたしません。科研費は研究者の「主食」であるとよく言われています。文科省から科研費が出ていているのですから、これをもらえなければ研究者としては大変苦しい立場になると思います。そういう意味で、私のような他に生業のある者が果たすべき事もあろうかと思う次第です。
ただ一方で、研究者とて自分の良心を持っています。専門家としての高い見識をして、「椅子や科研費が欲しいから」という理由などかなぐり捨てでも、言うべき事を言う研究者が必ず居ると信じていますし、311のあと既にそういう方が何人もいらっしゃいますよ。
(EK) シエア-させていただきます.子供達を守る為に,皆が心を合わせ,戦う時です
(MM) たくさんの人に知ってもらって、一緒に考えてもらいたいです。
(YE) 日本はどこかで取るべき道を間違え続けていたと思います。そのことに気づく人は少なくなくても、自分が生きている間は何とかなるのではないかという期待を抱きながら進み続けていたと思うのです。東日本大震災はそうした進み方に圧倒的なNOを突きつけたました。一日中研究者が泣き続けた光景に言葉はありません。これを次の道を選択するエネルギーに変えなければ。
(MR)  専門家の人たちもみんな知ってらっしゃるし、専門家でなくても国民の人たちもみんな知っているでしょう。政治家の人も分かっているはずなのに・・・もう日本だけでなく世界は資本主義を卒業しなくてはいけない時期に来ているのではないかと思っていますが、電気がなくても生きていた時代もあるのだから・・・しかし都市部では、電気なしでは今は生活していけないのなら、今までとまったく違う生き方を模索しないといけないのでは?専門家の方にも、これからの新しい暮らしを今を見て過去も見て、自然とともに生きる未来を一緒に創造して行きたいと思います。
(NH)  本当に腹だたしさを感じている毎日です。技術的に安全第一の原発の再稼働に技術的判断ではなく政治判断となるこの国のシステムっていったいなんだろう?シェアさせて頂きます。

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以下は、青木正美のページをシェアした makenaizoneメンバー 若林まみのページに寄せられたコメントです。
(EI) 重い事実ですが、薄々感じていたことでした。大飯原発の再稼働をめぐる動きを新聞でみて、不安を感じていたので、やっぱりという感じです。日本経済への心配はありますが、この問題は経済以前の生命や人間の生活が存続できるのか、という根本的なレベルの話。何を優先するべきなのかは明らかすぎると思います。関西に住む人間として、当事者なんだといい思いが強くなりました。
(CM) 「私たちを忘れないでください」という復興地の方々の思いをお伺いするたびに、あまりに遠くはなれた私になにができるのだろうと自問自答する日々を重ねています。それでも小さくてもできることを重ねていくしかない、そう思っています.
(MW) Mさん、バルセロナよりコメントをいただきありがとうございます!復興地の皆さんの思いに寄り添うことは たとえその地から遠く離れていらしても絶対に出来ると思いますし、すでに宮森さんはずっとそれを続けていらっしゃることをFBを通じて私も拝見しております。それぞれの立場で出来ることを少しずつ、そして末永く命のある限り続けていきたいと私も日々考えています。そういう気持ちを持った多くの仲間達が日本中、そして世界中でFBを通じて繋がり、同じ想いを共有出来る事に感謝しています。今後ともどうぞ宜しくお願い致します。
(NT) 桜咲き誇る季節だからこそ、この美しさをいつまでも残していくために何ができるのかを、一人一人が真剣に考えなければならない。目先の利益や自分の今の幸せではなく、未来を生きる子供たちとその子孫のために。自分たちがいなくなったあとも、この桜が咲き続けてくれるように・・・そう思いました。シェアさせてくださいね。

 


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