2015.3.23

2015年3月23日 月曜日

常磐自動車道を走ってみてーー復興とは何か

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2015年3月1日、常磐自動道が「復興の起爆剤」として、最後に残されていた双葉町エリアの帰宅困難区域の中を貫く13.4kmがついに開通しました。
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 このニュースを見て、真っ先に感じたのは真の復興とは何か、「利用者の被ばくよりも利便性を優先させること」は、真の復興・人間の復興ではないのではないか、ということでした。

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最後まで未通だった常磐富岡ICと浪江ICの間の14.3kmは、海岸沿いの福島第一原子力発電所から、3km内陸側の高線量地域を貫きます。そこは全区域が帰還困難地域です。

今回、友人の北原みのりさんと二人で、線量計を持ちよって常磐自動車道を往復してみました。首都高速環状線の京橋から南相馬まで、片道285km、往復8時間のドライブです。

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ところで東日本震災以来、私が体験した最高の空間線量は2012年10月の飯舘村長泥地区でバスの中7.8μSv/hでした。次点は2013年5月チェルノブイリ4号機前の広場(4号機から約30m)で7.4μSv/hでした。

常磐富岡ICと浪江ICの区間には上下線ともに6箇所の線量計が設置してありました。リアルタイムで計測されたこの日の最高値は、5.3μSV/hでした。一方で時速70kmで走る車の車内での最高空間線量は4.70μSv/hでした。

原発事故の際、福島第一原子力発電所から出た放射能プルームが11時の方向に流れましたが、最高線量の地点は約30秒ほどで通り過ぎます。時速70kmで走行すると、1μSv/h以上の空間線量を示す区間は約3分ほどで通過します。

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確かに2012年10月の飯舘村長泥地区の空間線量や、2013年5月チェルノブイリ4号機前の広場の空間線量よりも低い値ではあります。常磐自動車道の双葉町エリアの開通に当たって集中除染前の空間線量の最大値は35.9μSv/hであったと環境省の発表がありました。その場所の除染後は5μSv/hほどになっていたのですから、工事関係者の方々の大変な被ばくと努力があったことを物語る数字だと思います。

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けれどもその上で、今回初めて常磐自動車道を走ってみた、率直な感想を記したいと思います。

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まず東北と首都圏を繋ぐ大動脈として、いわきJCよりも北側は上下一車線づつの対面通行ですが、東北自動車道よりもアップダウンが無く、たいへん走りやすい道路でした。殊に帰還困難地域を突っ切る双葉町の区間は、直線が多く見晴らしも良く快適な道路でした。

運転することが簡単な道であることは、一般的には良いことなのだと思います。しかしそこは、いとも簡単に行けてしまうけれども、途方もなく線量の高い「別世界」なのだ、ということをドライバーがもう少し意識できるような工夫が必要なのではないでしょうか。

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ドライバーへの注意喚起は上下線に各6箇所づつある空間線量計だけしかありません。その電光掲示板に「5.3μSv/h」などと、数字の表示が出てくるだけなのです。

原発事故後、福島県に行ったことのある人であれば、空間線量計のこうした表示を見たことがあると思いますが、多くの人々にとって空間線量計のこうした掲示について、果たしてどれほどの情報になり得るのでしょうか。それは原発事故前の自分の知識を思い出してもらえば、誰でもすぐに合点がゆくことでしょう。

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国際放射線防護委員会IRCPの勧告に従って人体に影響が無い年間1mSvを超えないための空間線量は、0.23μSv/hであると言われています。つまり放射線量を日常的に意識しないでも良い空間線量は0.23μSv/hであるということを、常磐自動車道を走る人たちが全員知っているとはとても思えません。この値を知らなければ、たった今の線量を掲示されたところで、その場所の被ばくリスクが判断できないのではないでしょうか。

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例えば、チェルノブイリ発電所の半径30Km以内に外国人が入るには、未だにパスポートの掲示が必要ですし、双葉町などの帰宅困難地域に入るにも通行許可書が必要です。つまり「ここは高線量地域であり危険地域である」と承知の上で自ら被ばくリスクを引き受けているわけです。

それにひきかえ常磐自動車道は余りにも簡単に高線量地域に到達してしまい、それゆえ余りにも無自覚に被ばくをしてしまうのではないか。余りにイージー過ぎると、それは慣れ作用の加速を引き起こし、そう遠からぬうちにそこが高線量地域であることをすっかり忘れてしまう危険性があるのではないかと、たいへん気に掛かりました。

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ここは慣れを可能な限り回避するために、その地域に入る前のサービスエリアなどに、「これよりは高線量地域」と大々的に掲示して、危険なので故意に停止しない、絶対に窓を開けない、エアコンは外気の取り入れをしない、マスクを配布し着用を義務づけるなど十分に告知した上で、ハイウエイラジオやVICSで渋滞情報を詳細に提供したり、また自動車事故だけでなく悪天候や地震や水素爆発などでの通行止めの条件を、他の区間よりも厳しくするなど、具体的に利用者を被ばくから守ることに重点を置いてゆくべきではないかと思いました。

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今回、私たちが通ったのは3月のお彼岸の土曜日の夕刻でしたが、南相馬ICからの帰路は茨城県と千葉県の県境辺りから長い渋滞情報が出ていました。実際には私たちが通過する頃には、かなり渋滞も緩和されていましたが、それでも掲示板には三郷付近から渋滞45kmとのサインが出ていました。

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これがゴールデンウィーク・お盆・年末年始の頃には、渋滞がどうなっているのでしょうか。何処かで事故があった場合はどうでしょうか。これからは高速バスの運行も始まる予定の大動脈なのです。

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全国の高速道路網がどんどん繋がり利便性が高まっている今日、自宅からたった数時間で気軽に原発事故の現場近くに行くことができる国で暮らしているという事実に、私は実はかなり打ちのめされていました。そんな国は世界広しといえども他にはありません。であるならば、結果としてそこで何かトラブルがあった時には被ばくリスクは自らが引き受けなくてはならないのだ、という厳然たる事実を私たちの社会はもっと明確に共有しなければならなりません。

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放射線被ばくをするということは、私たちには全く何のメリットもありません。その事実の共有も事故から4年で忘れがちになってきています。

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確かに常磐自動車道は物理的には「復興への起爆剤」になり得た道路なのかもしれません。しかしそれは原発事故が無かったという仮定にのみ評されることなのです。

今、私たちの国は途方もない規模の原発事故からの復興をしている最中です。復興にはこれからも長い長い年月がかかることでしょう。だからこそ利便性ばかり追求して被ばくリスクが増してしまうことの結果は、決して自己責任として転嫁されるべき問題であってはならないと思うのです。この災害からの真の復興は、私たちの社会全体が、これ以上の被ばくリスクを負うという事実に対して、よりセンチティブに動かなくてはなりません。

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人類がかつて経験したことのない規模の原発事故による、これ以上の無用な被ばくから人々を守ることこそが、東日本大震災からの真の復興を遂げてゆく私たちにとって、最も大きく重要な観点であることを決して忘れてはならないと思います。


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